魔王
伊坂幸太郎の「魔王」
とある、兄弟の物語。
強烈な登場人物とよく練られたお話。
情報で溢れる現代で、自ら考えることを放棄し、雰囲気に流されやすい日本人。
自らの保身や利益の確保を優先し、必要なことが分かってもできない政治家たち。
閉塞感の漂う日本社会に強烈な個性を持った犬飼という政治家の登場。
それはファシズム支配の予兆でもあったりするのですが。
犬飼は国民に問います「覚悟はできているか?」「結果が出なければ俺の首をはねろ」
こんな事を言える政治家は今の日本にはいませんけど、ね。
そんな物語の中でちょいちょい引用される、宮沢賢治の詩がグッときたりするのです。
「諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか」 とか
「誰が誰よりどうだとか
誰の仕事がどうしたとか
そんなことを言ってゐるひまがあるか」 とか
「生徒諸君に寄せる」という詩の一節。
なんと力強いことかと。
「魔王」
読み終わった後、なんかちょっとまた頑張ろうかな、と思う作品です。
僕は、ですけど。